第6章 Season 1 後悔
「いやいや。でも最近生き生きしちょるってことは、今はそうでもないってこといね?ならなんも心配することなさそーじゃ?」
さぁ、それはどうでしょうと思いながら、私は首を傾げた。
「んでも、裕らぁからそこは聞いてないんじゃね。はぁもう時効じゃろ。……あの日酔っ払った慧さんの胸をあいつ、後ろから鷲掴みにした、らしい」
「らしいって……」
「俺がトイレ行って帰ってきたら、事後じゃったから」
「あー、だからつばさっちやたらと私に謝ってきたんだねー」
やっとあの平謝りのなぞが解けたぞ、と首を縦に何度か振った。
しかし、あんなかわいい顔しといて、やっぱり男なんだなぁ……。だまされないようにしなきゃと、気を引き締めた。
スーパーに着いて、まず乃々をおとなしくさせるために、乃々が気に入りそうなお菓子を探した。
とりあえず、乃々の分、と持たせておけば後はしばらくいいこしていてくれるからだ。
「ののたんねー、これにするー」
まだ悩んだり、迷ったりはしない年頃。
見たことがあったり、食べたことがあったりするものをさくっと選んでくれた。
「ねー慧さーん、今日はさぁ、振られたかわいそうな俺のためのメニューにしていーね」
「なによ、それ。しかも振られたの昨日今日じゃないんでしょ?」
「やっと人に言える位に落ち着いたんっちゃー。俺ステーキがえーなー」
「無理。上手に焼く自信がないよ」
だいたい、あの人数のステーキを焼こうと思ったらどんな状態になるんだ、と突っ込みたくなる。
「ほんじゃー焼肉ー」
「どこで?」
「庭」
「誰が準備するのよ」
「あー……俺じゃあできんのじゃったー」
自分の希望がことごとく通らず、拓は肩を落とした。
「焼肉はいつかみんなが休みのときにやろうよ。……んじゃー、カレーは?」
「ののたんかれーたべたーい」
とカレーという単語に反応した乃々がカートに座ったまま手を上げた。
「あー、それいいかもしれんね。最近カレー食っちょらんし。んじゃー肉いっぱい入れて肉ー」
なんだ、肉が食いたかったのか、と今更ながら気づいた。
「牛とー豚とー鶏とー、トリプルカレーにしていーね」
「えー、それってどうなの?」
「えーけ、えーけー。それがいいんちゃ。ルーはねー……」