第6章 Season 1 後悔
畳に顔をつけて寝転がっていたから、どうやら痕がついてしまっているようだ。
乃々が面白いものをみつけたといわんばかりに私の頬をがりがりと触ってきた。
「あはは、ほんとだ」
自分でもその痕を確認すると、絵本を開いた。
絵本を読むのは好きだ。短い話のなかにある世界観が、すごくホッとさせてくれる。
ときどき、子供にはわかってるのかどうか知らないけど、くすっと笑ってしまうような表現もあって、飽きない。
絵本を読み終わり、次は何して遊ぼうか、と乃々に訪ねた。
「んじゃーののたんかいもいきたい。おやつかってー」
「買い物かぁ…。外暑いかもよ?大丈夫?」
「じょぶー。さんりんしゃのるー」
それは買い物に行きたいというよりは、おやつと三輪車が目的だよね、と思いながらも買い物に行く事にした。
和室の窓を閉め、鞄やら何やらをとりに自室に行った。それから、
「乃々、おしっこは?」
「ないー」
乃々にトイレの確認をすると、そのまま玄関に向かった。
誰か休みって言ってた気がするけど、今日はいいや。乃々と二人だけで出かけちゃおう。
と、出かける事も告げずに、倉庫から三輪車を引っ張り出そうとしたが、なんか引っかかってしまっていて、がたがたと音を立てながら出すのに手こずっていると、
「あれ?慧さんお出かけ?」
二階から拓が下りてきたらしく覗いてきた。
「うん、ちょっと買い物」
「かいもー」
無事に三輪車を出し終えると、日焼け防止のアームカバーをつけ、帽子をかぶった。
「二人でいくの?」
「うん」
「……」
妙な沈黙。
「……一緒に行きたい?」
「行きたい!!」
ひょっとして、と思って聞くと、すぐに返事が返ってきた。
乃々は拓も同行する事に喜んでいる。
ならばと拓もつれて買い物に行くことにし、なるべく日陰を探しながら三輪車を押した。
「慧さん、そんな格好しとったら、ちゃんとお母さんっちゃねー」
「なにそれ。こんな格好してなくてもお母さんでしょ、どう見ても」
「いやいや、初めて祥さんに紹介されたときはそんな風には見えなかったっちゃ。まさか子供がおるとは思わんかったもん。家に行ってびっくりしたし」
「実際は意外におばさんだったなぁって?」
「そうじゃないけぇ。自虐的すぎじゃろ、それ」
と拓が笑った。