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私と彼らの生活

第5章 Season 1 ふたり目


「わぁっ、ごめんなさい」

メールがきてることさえまったく気づいてなかった。

『乃々がそろそろ飽きたみたいで、さっきからママはー?帰るーってうるさいのよ。連れて行っても大丈夫?』

「え?あ……すいませんっ。大丈夫ですっっ」

乃々を預けてる事を忘れてしまうくらい、メールがきてることに気づかないくらい、紘に溺れてしまっていた自分が怖かった。

『んじゃあ、じきにいくから』

そう言って電話は切れた。

「誰ー?」

「えっと、順さん。乃々連れてくるって」

私は、慌てて情事の余韻を消そうと、もう穿けない下着と脱いだままくしゃくしゃになりかけてるスカートを持って風呂場まで行き、新しい下着に取り替えてスカートを穿いた。

なんのごまかしになるかわからないけど、制汗スプレーをデコルテやら腋やらに吹きかける。

乱れたままのブラとシャツを整えて、ブラシで髪をすいた。すこし汗でべたついてる。

はがれかけてる目元の化粧を簡単に直した。

それからまたリビングに戻ると、部屋中の窓を開け、お気に入りの茶香炉に火をつけた。

ウェットティッシュを持ってきて、先ほど座っていたソファーを拭いていると、

「何やってんの。そんなことしたって、あの人にはもろバレだっての」

「……だ、けど……」

「だあって、今のお前、どんだけ普通にしようとしてても、すっげーいい女の顔してるよ?」

キスしたくなる、と言いながら、腕をつかまれ紘に唇をふさがれた。

「ちょ……と」

抵抗できなくて、素直に受け止めてしまうと、

「誘ってんの?」

「ちがうっっ」

ニヤニヤ笑う紘から離れ、冷めたコーヒーの入ったマグカップを流しまで持っていった。

わぁぁぁ、落ち着け私……と深呼吸をする。

何度か深呼吸を繰り返したところで、ドアチャイムがなった。

「俺がでるよ」

そう言いながら紘が飄々と玄関に向かった。

紘が玄関を開けた時点で、順さんには多分全てがばれてしまうだろう。

どんなに取り繕ってももう無理だ……と私は腹をくくった。
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