第4章 Season 1 きっかけ
「……紘くんと俺、どっちが好きかなんて聞かない。でも……俺は、紘くんよりも先に慧さんが欲しい」
そう言うと、私の手を引いて階段を目指した。
「まだ、拓も翼も帰ってきてないから、二階は誰もいないよ」
階段を上りながらも、裕の手は私の手をぎゅっと握って逃がさないと訴えてくるようだった。
「治さんも、いつも通りなら、まだまだ帰ってこないよね」
チビたちも寝たし、と一人でいろんなことを納得させるようにつぶやきながら、私を自身の部屋に連れ込んだ。
薄暗い裕の部屋のベッドまで連れて行くと、そこに座らされた。
「こないだは、ごめん。慧さんが嫌がるようなこと、するつもりはなかった。無理矢理じゃ、意味がないんだってさっき話しててわかったから。あの……抱いても、いいですか?」
裕は、真剣な目で私を見つめてくる。
「……」
私はどう答えていいものかわからずに、それでも目をそらせずにいた。
「……裕は、いいの?私なんかを抱いて、後悔、しない?」
ちょっと考えてからそう聞くと、
「しないよ」
「……ありがとう」
はっきりと答えてくれて、私は胸があったかくなった。
「大丈夫?」
私の頬に手を添えて撫でながら聞いてくる。
「うん。大丈夫」
そう返すと、裕は私にキスをしてくれた。
今日は、前みたいに口を結んだりせずに、素直に裕のキスを受け止めた。
すると、私の頭や背中を撫でながら、裕が体重をかけてきた。
ふわっとベッドに押し倒されて、半開きの唇の間から裕の舌が入ってきて絡んだ。
「慧さん……」
「……何?」
「今日は嫌がんないね。可愛い」
そう言いながらまた唇をふさぐ。
頭の中がどんどん溶けていくような感じがした。
息がだんだん荒くなってくる。
あったかい。
こういう感覚、なんかずいぶん忘れてた気がする。
裕と私は忙しく抱き合った。
裕のほうが限界だったのか、私のほうがそうだったのかはわからないけど。
治さんとは違う触れてきかたに、すごく身体がどきどきした。普段の裕とはちがう逞しさで、身体全体で私を包み込んでくれる。
「裕……」
「ん?」
「……あった、かいね」
「ん」