第1章 Season 1 同居人
「ねー、慧ちゃんちってさぁ、一戸建てだって言ってたよね」
「えぇ、まぁ」
「……部屋、いくつか余ってない?」
「……?」
今の居住空間は一階の部分だけで、我が家の家族四人分が足りてるから、約半分。
半分は確かに余ってはいる。
「……余ってます……ねぇ……」
「二世帯って言ってたよね?それって、風呂とかトイレは両方にあったり?」
「……一応……」
何度かそういう話をしたことがあって、祥さんは、我が家の無駄になった二世帯住宅の事を知ってる。
「あのさぁ、余ってるとこ、貸してくれない?俺が昔からよく面倒とか見てるやつらなんだけど、住むとこ探してんだよねー。はじめは一人暮らしでうまくいくと思ってたらしいんだけど、やっぱ何かと苦しくなってきてるみたいだし、食事なんかも滅茶苦茶だし……」
「ちょ……!!ちょっと待って!!待って、何言ってるんですか?」
ほぼ余ってる部屋貸し出し決定!的な流れに、私はあわてて祥さんにストップを掛けた。
「ま、早い話が、慧ちゃん大家になっちゃいなよ!みたいな話よ。どう?悪くなくない?家賃なんかも、今のローンの月額の半分をこっちがもらって払わせるし。ただ余ってる部屋遊ばせてるよりは収入が出るわけだから、慧ちゃんちも楽になったりしない?」
祥さんが、ね、いい話でしょ?と自信満々で話してくる。
「うーん……よくわかんないですけど、聞いた限りでは、悪い話ではないような気がしますねぇ」
あまりにうまい話を並べられたせいか、頭のどっかが麻痺しちゃって判断できてないのか、なんかそういうのもいいような気がしてしまった。
「でも、祥さんの知り合いって……」
「うん。今度そいつら紹介するから。ちょっと考えてみてよ。いいやつらだよ。俺が保証する」