第4章 Season 1 きっかけ
心臓に悪いからやめて欲しい、ほんと。
心の底からそう思った。
「すくねぇっっ。慧結構ピュアじゃん!?」
「ちょっと紘くん、ピュアの意味履き違えてない?」
なぜかテンションの上がった紘に、裕の突込みが入った。
「でも、その旦那さんの前がひとりってのも問題あるわね。多分、旦那さんと付き合うちょっと前、とかその程度でしょ?」
「うぅぅ~……」
「旦那さんしか知らないんなら、まだ良かったんだけど、ね」
順さんの言葉の意味がまだ私にはわからない。
「なんでですか?」
「だって、比べようがないじゃない。生涯ひとりだけなんて幸せなもんよー。でも、慧ちゃんはそうじゃあない。それがまずい。しかも、愛情表現してくれることも含めて結構その前の人と相性よかったことない?」
「……そんなの、わからないです……」
「あたしはそう思うわ。だから、ますます不完全燃焼なんじゃないかしら。旦那さんとの間に物足りなさがあって、不満があるから、頭じゃ忘れてても身体の奥底で覚えてる昔の快楽がうずいちゃうのよ」
と順さんの分析は続いた。
だけど、それがまずいと言われても、今更どうにもできることじゃないじゃないか。
「そんでさぁ、あたしからひとつ提案っていうか、やってみて欲しいんだけどね」
ここからはあたしの勝手な興味の範囲よ、と前置きして、
「紘か裕、どっちかでもどっちもでもいいんだけどね、慧ちゃんに手、出しちゃいなさいよ。慧ちゃんもそのズタボロの心、癒してもらいなさいな。ちゃんと満たされれば、その不完全燃焼も収まるから」
「はぁ?????」
私は突然の話の変わりように思わず大きな声をあげてしまった。
「世の中には、不倫だとかセフレだとかが溢れてる時代よ?そんな時代に一人で枯れちゃってていいの?」
「よかないですけど……」
でもそういうのってやっぱり……。
「裕も紘も、慧ちゃんのこと嫌いじゃないでしょ?」
「嫌いじゃないよ。つか俺は慧の事好きだし」
紘は恥ずかしげもなくそう言ってくれた。なんだか心臓がドキドキしてきてしまった。
「俺も……好き、だけど……」
裕も少し照れながら目を伏せてそう答えてくれた。