第4章 Season 1 きっかけ
「男を知ってるってことは、結局さっき紘が言ったようなことだけじゃ、やっぱり物足りなくって、満足しきれないってことなのよ。しかも慧ちゃんは紘の言ったような部分も実際は満たされてないみたいだから、それ以前の問題だけど」
私の頬をつねるのをやめた順さんは、ごめんね、痛かった?となでてくれた。
「どういうこと?」
「んとね、だからぁ、もし仮に慧ちゃんの脳みそはそれで満足しちゃっても、ちゃんとセックスしないと身体が満足しなくってどんどん老化しちゃうってことよ。身体も心もどっちも満たされてなきゃ、女じゃなくなっちゃうのねー」
結局更年期みたいな?と順さん。
「慧ちゃんもさ、なんでかわかんないけどシたくてシたくて仕方がないときってない?あるでしょ?」
「またぁ……なんでそんなこと聞くんですかー?」
恥ずかしくなって私はまたうつむいた。
女の子同士でそういう話をするのとは訳が違う。
しかも、完全に私のことばかりに集中しているのが余計に恥ずかしい。
「あるわよね?」
「……ハイ……」
順さんの言葉に圧され、うつむいたまま小さい声で返事をすると、
「それって、やっぱり身体が男を求めてるってことだと思うのよ」
うんうん、と順さんは満足そうにうなずいた。
「え?慧にもそういうときってあるの?」
紘が、それは気づかなかったやと伸びをした。
「だったらさー言ってくれればいいのに。俺が相手になってやるから」
「ちょっと、なんでそーなるの」
裕が慌てて割り込んできた。
「だって、キスして、ギュってして、可愛いって言いながら愛しあえばいいんでしょ?余裕じゃん」
「余裕とかそういう問題じゃ……。しかもそれってさっきの紘くんの勝手な意見だし」
あーもーこれだから酔っ払いは、と裕が溜息をついた。裕はまだそんなに酔いが回っていないらしい。
「慧ちゃんはさ、そういうときどうしてるわけ?」
「別にどうもしませんよ」
「自分から旦那さん誘ったりはしなかったの?」
「誘うっていうか、真っ正直にしたい、とは言えなくて……。そういう空気を作るんですけど、避けられる、というか……」
「空気?例えばどんな事してんの?」