第4章 Season 1 きっかけ
「どのくらい?」
「……半年……以上」
「やっぱりねー。そんなことだろうと思った。医学的には健康なカップルが一ヶ月性交渉を持たなかったらセックスレスって言うらしいわよ?知ってた?ところで慧ちゃんさー、最近、というかちょっと前まで滅茶苦茶情緒不安定だったりしなかった?」
あたしにはそう見えたんだけど?と順さんは紘や裕のほうを見る。
「確かに、なんかずっと思いつめたような顔してたりしたよね」
裕が思い出しながら言った。
「うんうん、確かにそーだった。気がついたら溜息ついてたし」
と紘も相槌をうった。
「でもね、ほんとここ数日、慧ちゃんからその色が消えた気がするのよ。まぁあたしが見てる慧ちゃんってバイト中の数時間だけだけど、それでもなんか違うのよねー。ねぇなんかあった?あったでしょ?」
順さんが私のほっぺたをつねりながら聞いてくる。
「じゅんひゃん、いたいれす……」
「何かあったかって聞いてるの。答えて!」
「……アリマヒェン」
そう答えると、
「うそよー。あたし確かに慧ちゃんから男の気配感じたもの。どこの誰なの?」
なめてかかると痛い目見るわよ、と順さんは私の肩から腕をはずし、両手で頬をつねってくる。
「やめひぇー、いひゃいー」
順さんの手をはずそうとするが、酔っ払ってて力が入らなくて。
「まぁいいわ。とにかく、まだ完璧ってほどじゃないんだけど、なんか慧ちゃんの中にあったつっかえが少し取れたような気がするのよねぇ……」
順さんは私の一体何を知っているのだろうかと、少し不安になった。
「大体、こんな妙な同居生活送っときながら、今まで誰も慧ちゃんに手を出してないわけ?」
順さんが不思議そうに聞くと、その問いには、紘も裕も口をつぐんだ。
「まぁとにかく、セックスはしてなくても慧ちゃんはなんかつっかえがとれたのよね?で、さっきの話に戻るんだけどね、慧ちゃんってもう子供二人もいるわけだし、それなりに男を知ってるってことでしょ?」
少なくとも一人は、と順さんが付け足した。
「んで?」
紘は、それがなんなのか判らない、という表情をしている。