第4章 Season 1 きっかけ
「そろそろ、酔いが回ったかしらー?」
順さんが私の目の前で指をくるくると回す。まるで魔法をかけるように。
ぐるぐるぐる……。ふら~っ。
ちょっとこっちにおいでと、順さんは私を隣に呼び寄せる。そうして、私の肩を抱きながら、ふと思い出したように話を始めた。
「ねぇ、知ってる?」
順さんの振りに、紘も裕もこちらに目線を向けてきた。
「女の子ってね、ちゃんと可愛がってもらえないと、20代でも更年期みたいな症状がでちゃうらしいわよ?」
「何それ。どこ情報?」
紘が、食いついてきた。私は順さんに肩を抱かれたまま、体重を少し順さんに預けている。
「ひみつ~」
人差し指を立てながら言う順さんに、
「でもねー、女の子って、身体じゃなくて脳で感じるらしいのよ。だから、ただセックスするだけじゃだめなんだって」
ものすごく過激な話に突入したなぁと思いながら、順さんの腕から逃げられそうになくてそのまま黙って聞いているしかなかった。
「んじゃぁ、逆に言えばエッチしなくっても満たしてあげる事は可能ってこと?」
と紘は少し不思議そうに問う。
「例えば?」
その疑問に裕が被さる。
「んー、いっぱいキスしたげるとかー、いっぱいぎゅーってしてあげるとか?あと、いっぱい可愛いとか愛してるって言ってやる、とか!!」
紘が自分の考えを述べた。
「そーね。やっぱりそれって大事よね。それだけで愛されてるーって感じられるし。ところで、ねぇ慧ちゃん旦那さんって優しい?」
「優しい、というか……無口です」
「好きーとかそう言う類の事ちゃんといってくれる?」
「いんえ」
「そんでね、慧ちゃん」
「はい?」
「最近、セックスした?旦那さんに限らず」
また、極端にストレートな言葉を投げてくるな、と思いながら、私は赤い顔をして下を向いた。
「……なんでそういうこと私に聞くんですか?」
「だって、20代の女の子って慧ちゃんしかいないじゃない」
順さんは、ぶぅっと頬を膨らませながら言った。
何でよりによって、この二人の前で話さなきゃならないんだろう。
「ねぇ、どうなのよ?」
でも、よく考えたらこの二人はうちがレスだってこと知ってるんだよなぁって思い出し、
「……シテマセン」
消えそうなほど小さな声でそうつぶやいた。