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私と彼らの生活

第4章 Season 1 きっかけ


食べるものは、娘たちが起きてた時点でテーブルの上に広げられていたので、後はお酒だけ、という状態だった。

「ふーん。まぁ、俺は飲むけどねっ」

と紘はビールの缶を手に取り、

「あたしも呑むわよぉ。つか、今日は慧ちゃん酔わせていろんな話聞きだそうと思ってたのに……」

つまんなーい、と順さんもビールの缶を開けた。

私以外がビールの缶を持ってる中で、一人ノンアルコールを口に。

味だけはしっかり似たようなものなのに、やっぱり酔わない。

当たり前だけど……。




呑み始めてからしばらく、順さんの最近の話だったり、はまってる事だったりで盛り上がった。

私にとって順さんはバイト先の先輩だけど、どういう関係なのか細かい事は知らないが、紘や裕にとっても昔からよく知っている人だから、みんながちゃんと話に参加できた。

私以外が、みんなほんのり頬を染め始めるくらいアルコールを飲んだころ、ふと順さんが、

「やっぱり、慧ちゃん、あんたも呑みなさい。面白くないわ。責任はあたしがとるから」

そう言って、ビールを勧めてきた。

「大丈夫大丈夫。あんまりたくさん呑まなければいいんだから、ね」

酔っ払って少し理性が薄くなってる裕が追い討ちをかけてくる。

少しなら、大丈夫、かなぁ……。

やっぱりどこかで呑みたくなってしまっていた私は、つい誘惑に負けて順さんが差し出してくるビールを手に取ってしまった。

「あーあ、呑んじゃった」

一口呑んだ所で、紘が茶化してきた。

「いーの。そんなこと言わないの!」

ほらほら、もっと呑んで、と順さんは缶の底に手を当てて無理やり傾けた。

「ちょ、と、順さんこぼれる」

呑みきれなくて口から溢れてしまった。

「やだー、慧ちゃん、いやらしー」

何がいやらしいのかは判らないけど、もうだいぶ出来上がっているのだろう、順さんは手を叩いて喜んだ。

「うぅぅっ」

私は口元をティッシュで慌てて押さえて拭いた。

しかし、あの呑み会以来お酒を飲んでいなかった私の身体は、驚くほど早くアルコールを吸収し始めて、さっきの無理やり一気飲みさせられたのも手伝ってか、急に酔いが回ってきた。

一缶空けるころには、目がうつろになってしまってる私を、裕が心配そうに見ているようにも思えた。
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