第2章 Season 1 夢のあと
きたきた。
これが嫌なのよ、この流れ。
もう何度同じようなせりふを何人の人から聞かされたことか。
うちよりも確実にお宅のほうが三人目の確率は高いですよって言ってやりたいのを我慢して、
「そうですかねー。でもほんともうふたりで手一杯……」
と言葉を濁した。
三人目……。
考えないわけはない。
やっぱり、周り見てるといいなぁって思うのが正直な気持ち。
ずっと子供は三人欲しいと思ってた。
でも最近は、三人目は、治さんとじゃない人の子供が欲しい、なんて思ってしまうのも事実で。
別に誰の、とかじゃなくて、なんだか治さんの子供を身篭ることに抵抗があるのだ。
そうなると、寧々や乃々とはまた面倒な事になりそうだし、まず私にそんな器用なことができようか。
そう思うと、確実に三人目はうちにはこないだろう。
治さんとの子供は、もう、私の中でありえなかった。
結婚指輪も、外してどのくらいになるだろう。
先に外したのは治さんの方で、私はしばらくつけていたのだが、何か私だけつけているっていうのは必死でしがみついている気がして、やめた。
それに、今のこの苦しい状況で、三人目を育てられる余裕がない事はもちろん、治さんと肌を重ねる事さえ最近はできずにいる。
もう、しばらくそういったことがないから、逆にそういうことになった場合の気まずさを想像すると、気分が滅入ってしまう。
自分自身、それを望んでいるのか望んでいないのかもうはっきりしなかった。
心のどこかでは愛されたいと願っているのに、心の他のどこかでは治さんを拒絶しようとしている自分がいる。
私がこんなだから、うまくいかないのかもしれない。
やっぱりもう、私と治さんとの間の歯車は合わないどころか壊れてしまっていて、戻る事はないのかな、と思うとまた切ない気持ちに胸が支配されるのだった。
最近の悩みはもっぱらがこれのような気がする。
女としてみられていないことが、こんなにも苦痛だなんて知らなかった。
世の中に、私のような思いをしている人はどれくらいいるのだろう……。
私の周りでそういう話は聞かないが、ネットなんかを見てると、結構みんな苦しんでるように思える。
見ず知らずの世界での仲間にホッとしながらも、一生この状態が続く事を思うと、なんて私は惨めなんだろうと、いつも悲しくなってしまうのだった。