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私と彼らの生活

第1章 Season 1 同居人


玄関で靴を履いていると、ちょうど階段から降りてきた拓に見つかってしまった。

「あれ?どっか行くん?」

「んー。買い物ー」

裕がそっけなく返した。すると拓は、

「そーなん?じゃったら俺もついていこーっと」

私の隣に並んで靴を履き始めた。

「そいやぁ寧々たちは?」

裕が拓に聞く。

「今つばの部屋におるよー。なんか一緒に作りよるみたい。折り紙やらが散らばっちょったもん」

「あぁ、そうだったんだ。勝手にお兄ちゃんらのほうに行ったら駄目だって言ったのに、もう。つばさっちに申し訳ないなぁ。あとでお礼言わなきゃだ」

幼稚園から寧々が帰ってきて、妹の乃々も「ねぇちゃんねぇちゃん」と追い掛け回していた記憶はあるんだが、その後は、どうせ二人で勝手に遊んでるんだろうと気にも留めてなかった。

勝手に外に出てしまうようじゃ困るが、家の中ならまぁ心配はないだろうと。

ちょっと前までは、何をやるにも私がそばにいなきゃだめだったのに、寧々は幼稚園に行くようになってから、少しずつママ離れが始まって、自分のやりたい事は自分でやるようになった。

そして、乃々はそんな寧々についていくのが好きらしく、私抜きの時間が増えてきた。

自分たちの部屋で遊んでる分にはまぁよかったのだが、時々彼らの敷地に踏み込んでるときがある。

せっかくの午後休みでのんびりしたいだろうに、無条件に飛び込んでくる娘たちを受け入れるしかなかったのだろう。

なんだかすごく申し訳なくなって、私は少しうつむいてしまった。

「翼ー、おチビらちょっとよろしくねー。買い物に行ってくるからー」

裕が上階に向かって声を張った。

「うんー、大丈夫ー。行ってらっしゃーい」

無事声が届いたんだろう。翼から返事がある。

「まぁ、気にしんさんな。つばも好きでやりよるんじゃけぇ。安心して、まかせちょったらええよ」

拓が私に声を掛けてくれる。

なんでもすぐに気にしてしまう私のこと、本当はちょっと面倒だななんて思われてるのかもしれないけど……。

さっき裕は私が一体何に悩んでるのか、なんて聞いてこなかった。

ただ、なぜか気づくと不安になってる私のそばにいてくれてる。

それは今日に限った事ではない。今までも、何度かあった。

きっとすごく敏感なんだろうと思う。
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