第2章 Season 1 夢のあと
紘からパスタの皿を受け取ると、再びキッチンに戻り、鍋に牛乳を沸かした。
コンソメを溶かし、パスタをざるに入れて軽く水で洗い流したあと、鍋の中に入れた。
とろけるチーズも入れちゃおう。
今度はちゃんと味見をしながら仕上げた。
「できた。ごめん、適当だけど……」
リメイクしたパスタを手にテーブルまで戻ると、
「はえぇっ。もう出来たん?すげぇっ」
「スープパスタ?的なものにしてみたよ」
ま、作り方としては邪道だろうけどね、と付け加えながら。
「お、うまい。今度は食える。ぜんぜん胡椒辛くない」
紘の感想にほっとしつつも、私もまたパスタを食べ始めた。
「ほらさー、こうやってさくっと作り変えちゃうとかさー、なかなかできることじゃないし」
うめぇと言いながら紘が褒めた。
「そーかなぁ?」
私も褒められていやな気はしないけど。
そういえば、治さんがこんな風に褒めてくれた事って、ないなぁ、なんて思い出した。
「でも、治さんにとっちゃ、こうやってなんでもやってのける慧が普通で当たり前だから、なんとも思わないんかもね」
当たり前、かぁ。
結婚してだんだん空気みたいな感じにはなってたけど、やっぱそうなってるんだよね。
だからって、今更なんにも出来ない女になれるほど私は器用じゃない。
割と完璧にこなそうと努力してしまう。
「俺から見たら、こんなこと簡単にやっちゃう慧って、すごく魅力的だけどさっ」
よくもまぁ、恥ずかしげもなくそういう単語が出てくること。苦笑いしながら私は紘に、
「褒めても、何もでないよ」
言うと、紘は急にまじめな顔になって、
「別に何かを期待してるわけじゃねえよ。ただね、俺にとって慧のやってる事ってすごいから、でもそれってちゃんと言葉にしないと伝わんない事だと思うから言っただけ。治さん、こういうこと言わないでしょ?」
見てればわかるよ、と、紘は続けた。
「まぁ、たしかに口数は少ないよね」
「だから、俺が治さんの代わりにいいと思った事は言ってやる。そうでもなきゃ慧は報われないでしょ?」
「……ありがと」
「べつにさー、治さんもやきもち妬いたりしてないわけじゃないと思うんだよね。言わなかったり表にださないだけで」
「そうなのかなぁ?」