第2章 Season 1 夢のあと
こういう時って、本も見ないし、自分の思いつきで作っちゃうから、味付けも気分だし、いろいろ適当になってしまうのだけど、なぜだかいつも思ったよりいい具合に仕上がる。
たぶん、パスタと私は相性がいいのだろう。
私が昼ごはんの準備をしてるあいだ、ちょっと自分の部屋に行ってくると出て行った紘は、しばらくして戻ってくると、テーブルのほうに移動して座りなおし、そのまま、私の方を見ていた。
「今ってさー、まぁ乃々はいっけど、俺と慧だけなんだよねー」
「うん、そーだねー」
紘は、あまり人に対して壁をつくらない。
人懐っこくて、すぐ打ち解ける。
私に対しても、来たその日から、本当に初対面か?ってくらいずうずうしく接してきた。
でも、なんかそうやって対等に扱われるのは嫌じゃなくて、紘と話すのはすごく気が楽だった。
じきにパスタも茹で上がって、具も炒め、そろそろ味付けの段階。
「普通さぁ、いい大人の、それも恋人でもない男女が真っ昼間に二人だけで部屋で過ごすって、あんまないじゃん?」
「……?」
「こういうのってさぁ、治さんはなんとも思わないのかな?」
「……さぁ、ね」
私の声のトーンが下がった。目線をフライパンに戻して、胡椒を手に取った。
考えないようにしてた。考えても仕方ないことだってわかってた。
治さんは、なんとも思っちゃいない。どうせ、私には何も出来ないと思ってる。
今みたいに他の男と二人ですごしたことを話したって、特に反応すらしないだろう。
「あれれ?俺、地雷ふんじゃった?やっべー。ごめーん」
私の纏う空気が変わった事に気づいた紘が慌てて取り繕った。
「違……!!大丈夫だから。なんでもないよ」
おっとあぶないあぶないと、空気を元に戻した。
また、やってしまうところだった。
私のこういうところが、彼らに心配をかけてしまう原因だというのに……。
核心部分に近いところに触れられると、ふっと顔が曇ってしまう。
ただでさえ態度に出やすい性格みたいだから、気をつけてないと常になんか悩んでる暗い女だと思われてしまいそうだ。