第1章 Season 1 同居人
「ひゃんっっ」
裕のわき腹から手を離し、胸を掴んでる翼の手首を握って引き剥がす。
「ちょっと!!何すんのよー」
「ひゃんって、慧さん……」
裕が下から私を見上げてつぶやいた。
「……裕たん、すごい……。慧さん、けっこうちゃんと胸ある……。しかもノーブラだった」
私につかまれたままの手をわしわしと動かしながら、翼が裕に報告した。
「……え!?マジ!?」
「もー、何の話?そんなわけないでしょ?」
つかんだ翼の手に爪を立てながらギューっと力をこめた。
そこにトイレから戻ってきた拓が、
「……何、これどういう状況?俺がおらん間に……」
目をまん丸に見開いて言った。その声に振り返った翼が、
「拓ちゃん拓ちゃん、慧さんノーブラ!」
と訴える。
「えぇ!?何?触ったん?」
「もー、だから違うって言ってんでしょ!!」
翼の手を離すと、裕の膝の上から降り、羽織っていたパーカーの胸元を合わせながら元の場所に座った。
「ほーら、僕の勝ちでしょ~?」
嬉しそうに勝ち誇った顔をしながら、翼も元の位置に戻った。
「なんけーや。俺も混じりたかったー」
「なら、やったげるよ」
拓のわき腹をくすぐりに行く翼。
「ひゃひゃひゃ、それじゃないっちゃ」
横を見ると、裕がなんか複雑そうな顔をしてグラスを見つめていた。
「どしたの?裕」
「裕たんはねー、多分慧さんのノーブラが気になってしかたがないのですー」
拓をくすぐりながら翼が言った。
「は?違うって。ノーブラってかこのタンクトップ、ちゃんとカップつきのやつだから」
「それって、やっぱりノーブラじゃあね!」
と拓が翼の手を押さえつけながら言った。
「超やぁらかかった」
翼が感想を述べる。
「言うなっての」
なんだかちょっと恥ずかしくなって私は目線をそらした。