第1章 Season 1 同居人
「いーなぁー治さん。好きなときに好きなだけ慧さんのおっぱい触れるんだもんねー」
僕一瞬だけだったよぉと翼が、頬を膨らませた。
可愛いけど言ってる内容がいつもの翼とは比べ物にならないくらい低レベル……。
そんな翼の言葉に私は、
「ないない、それはないから。だってうちレスだもん」
思わず滑らしてしまった言葉に、周りの空気が一瞬凍りついた。
「え……」
「マジで……」
そんなに驚くことかな。
「いや、だってよ、もう、子供二人もいるし、治さんからしたら私は女に見えてないんじゃないかなー?べつに、そんな可愛げのある女でもないしね、私。最近まったくそんな気配ないもん。……つか、こんな話みんなにしたってどうしようもないのにねー」
あはは、と笑いながら言ったものの、なんだかすごく空しくなってくる。
ほんとこんなこと彼らに言ったってどうしょうもないじゃないか。
ぽろっと私の目から涙がこぼれてしまった。
「あ……ごめん……」
目元を押さえながら立ち上がると、ごまかすようにテーブルの上を片付け始めた。
「……もう、今日は終わりにしよっか。せっかくの楽しい空気ぶち壊しちゃってごめん」
言いながら私はグラスやお皿をトレーにのせた。これ以上深い話になっちゃったら、多分本当にみんなに迷惑をかけてしまう。
なんて思われただろう。
黙ったまま片づけを済ませると、みんなに楽しかったよおやすみと告げ、立ち上がった。
裕たちは、何か言いたそうな、でも言えない様な顔をしながら階下に下りる私を見送ってくれた。
1階のキッチンで一人になって、改めてほんと最近まったく治さんには女として見られてないどころか、心配すらされていないんだろうなぁと思い返すと、すごく寂しくなって、アルコールも手伝ってくれたのか涙がしばらく溢れて止まらなくなった。
缶の中にまだ残っていたチューハイを一気に飲み干すと、頭がクラクラしてきた。
多分、ちゃんと布団に入って寝なきゃいけないんだろうけど、私の意識はそのままそこで途切れてしまった。