第1章 Season 1 同居人
「店仕込み?」
「あ、僕学校終わったら、飲み屋でバイトしてるんですよ」
「へー。知らなかったや。バーテンさんなんだ」
「まぁ、そんなもんですかね」
「ちょっと俺トイレー」
盛り上がる私たちを尻目に、拓が席を立ち部屋をでていった。
「じゃあ何、そんな度数強いの呑ませてつばさっち、私を酔わせるちゅもりかー?」
あまりろれつが回らなくなってきた。
「もう酔ってるっつーの」
「だったらー、これ以上酔わせて、何する気らー?」
くだらない会話に楽しくなって笑いながらカクテルを飲んでいると、床についていた左手の指先に裕の手が触れた。
ちょっとびくっとしてしまったが、そのまま動かさないでいたら、裕の右手でぎゅっと包み込まれた。
ローテーブルの下だから、翼からは見えていないだろう。
「さー、酔わせて何しましょーかねー」
「何でもしてきやがれー。私つばさっちには勝てそうな気がするろー」
グラスをテーブルに置き、右手で握りこぶしを作ると翼に向かって突き出した。
「僕に勝てると思うんですか?本気で」
突き出したこぶしを手のひらで受け止めながら言う翼。
「だって、つばさっち女の子みたいに華奢でかわいーもん。私より弱そーう」
ねー、裕ー、と裕のほうに話を振る。
「いやいや、いくら翼がかわいいからって、一応翼も男だからね?」
「何?僕ってそんなに女の子みたいに見えます?」
「見える見える!ほんとは乳とか隠してるんじゃなーい?」
キャーと身を乗り出し腕を伸ばして翼の胸をぺたぺたと触った。
「いやーヘンターイ!慧さんのエッチぃー」
「もー、慧さん呑みすぎだよー」
裕があきれて突っ込みを入れてきた。
「何だ?裕もさわってほしーんかぁー」
テーブルの下でつながれてた左手を離すと、身体の向きを変えて裕に襲い掛かった。
「ははははっっくすぐったいし」
私は両手で裕のわき腹を思いっきりくすぐってやった。
「ちょ、もーやめっ。あはははは。ったすけてっ、翼ぁーっ」
「はははは。つか、触って欲しいのは慧さんのほうでしょー?」
ほぼ裕を押し倒すような形で裕の膝の上にまたがりくすぐってる私の後ろにくると、がしっと胸を鷲掴みにしてきた。