第1章 Season 1 同居人
「ちょと、慧さん。入れすぎ入れすぎ!!」
他の空いた缶を持って裕が追いかけてきた。
彼はまだそんなに酔ってないのだろうか?
ちゃんとまっすぐ歩けているように見える。
慌てて私の手からアイスペールを取り上げると、こぼれるよ、と少し冷凍庫に戻してくれた。
そして冷蔵庫からソーダのボトルを出した。
「もう、慧さん呑みすぎでしょー?つか、ちょっといつもより酔いが回るの早くない?」
「そんなことないってー」
裕たちと打ち解けるのはわりと早くて、最近は時間が合うと、こうしてよく家呑みをしてた。
というか、チューハイ一缶でも、一人では呑むのは面倒だが、よく裕が私に付き合ってくれていた。
もちろん、そういうときは下のリビングでだけども……。だから、裕は私の呑み方を少し知っている。
きゃははははと笑いながら私は裕の肩をバシバシと叩いた。どうやら私は酔いが回ると、ボディタッチが増えるみたいだ。
「んもぅ、痛いし」
裕が肩を叩いていた私の右手首を掴んだ。
「?」
手首を掴まれて、私は裕の目を探した。酔っ払ってるから、ちゃんと焦点があわない。
あきらめた私は、冷蔵庫のドアをばんっと勢いよくあけて、中からチーズを取り出した。
「これも食べよーか」
裕に手首を掴まれたままなんとかその場でバリバリとチーズの包みをはがすと、えいっと裕の口に押し込んでやった。
「食えー」
あははと笑いながら、私の手を掴んでいる裕の手をはがそうとすると、逆にぎゅっと力を入れられ、引き寄せられた。
そしてボトルを置いて空いた手で口に押し込まれかけたチーズを取ると、台の上に置き、私を抱きしめてきた。
「……裕?」
「慧さん、無理しなくていいって。今日、酔いが回るのが早いのも、無理して笑おうとしてるから、でしょ?」
「無理してないっっ。ほんとーに楽しいんだもんっっ」
ムキになって裕から逃げようと身体をよじった。
でも相手は男の子だ。簡単には離してくれない。