第1章 Season 1 同居人
とにかく私は笑った。彼らの様子がおかしかったのもあるが、空気が私を笑わせてくれた。
まだ、ほんの少ししか呑んでいないような気がしたけど、家族と過ごす空間と違うし、ここは気を張ってなくていいと思ったとたん、急に酔いがまわってくる。
今の私、たぶん目は赤くて、うつろで、とてもじゃないけど可愛い顔じゃないんだろうなぁ、なんてぼんやり思ったり。
ただでさえスッピンだ。ひどい顔なんだろう。
「慧さん、隣いい?」
アルコールが体中に回り、気持ちよくなりかけてたところに裕が声を掛けてきた。
振られれば会話の中に入っていたけど、ほとんど外から彼らの会話や様子を眺めているほうが面白くてそうしていたから、その声にふっと、意識が自分の中にもどってくる。
「ん?どうした裕」
「いや、どうもしないけど、慧さん楽しんでるかなぁって」
「面白いよー。拓もう出来上がっちゃってるし、つばさっちとは初めて呑んだけど、結構強いのかなーなんて思ってたし。裕は?どう、ちゃんと呑んでる?」
「うん、呑んでるよー。もうこれで3本目。そろそろ、部屋からなんか追加の酒持ってきていろいろ割って呑もうかなって思ってたとこ」
赤い顔をしながら、嬉しそうに笑う裕。
「そだねー、それもいいかもー。私も呑みたい。あ、氷用意しなきゃね」
準備しに行こうと立ち上がると、思ってた以上に酔いが回っていたらしく、少しバランスを崩した。
「ちょと、慧さん、大丈夫?」
裕が慌てて私の身体を支えようとする。
「ダイジョブダイジョブー。ちょっとフラッただけだからー」
空いた缶を持てるだけ抱えて、私はふらふらする足で階段を降り、キッチンへと向かった。
アルコールが程よく回って、頭の中もふわふわしててすごく気持ちがいい。
心の中に引っかかってたいろんなことが、今ならまったく気にならない。
あーなんか幸せだなぁって思いながら、アイスペールを取り出し、氷を詰めた。
正直、ちゃんとやってるつもりではあるが、どこまでちゃんと出来てるかはわからない。