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私と彼らの生活

第10章 Season 1 衝動


「慧さん、大丈夫?」

「うん……大丈夫」

「でもなんか苦しそう」

「平気……」

確かに少し息が粗くなってる気もする。

「帰ったらゆっくり休んでね?」

「うん」

足取りもなんだか少しふわふわして、まっすぐ歩けてるか怪しいところだ。

「ほんとに大丈夫?」

翼が歩みをやめて正面から私の顔を覗き込んできた。

私は引き寄せられるように翼の唇に自分の唇を合わせた。

「……!!」

自分が一番驚いた。はじかれるように顔を離し、慌てて翼の手を振りほどき、家に向かって走り始めた。

「ちょっと!慧さん!?」

翼が追いかけてくる。

私、今何した?足元がやっぱりふわふわする。

「どうしたの?何か、あったの?」

私に追いついた翼が、後ろから抱きしめてきた。

どくんと心臓が跳ね、私は脚を止めた。

「わかんない。ごめん、変なことして」

「ううん、それはいいんだけど。でも僕、いつもと違う慧さんが心配。……ねぇ仕事で何かあった?」

「何も、ないと思う。さっきちょっと順さんと喋っただけで」

「順さん?」

「うん」

「なんだって?」

「何も。他愛もない話だったよ?」

話の内容を翼に話すのをためらって、ごまかした。

「そっか。なら、いいや。帰ろう」

抱きしめていた腕を緩めて再び私の手を握り、少し早足で引っ張るように翼は歩いた。私も黙ってそれについていく。

家に帰り着いて玄関を開けると、翼はいつものようにおやすみ、また明日ねと言い残して上がっていった。

私も汗を流すため風呂場に向かった。

服を脱いでシャワーを浴びて、なぜかゾクゾクする身体とふわふわする頭に戸惑いながらパジャマに着替えた。

早く寝よう、そうは思ってもまったく眠くなく、寝室に向かいかけた脚の向きを変えて階段に向かった。


二階に上がると、吸い寄せられるように裕の部屋へと向かった。

裕に翼とのことを追求されて以来、私は誰とも関係を持っていなかった。

私は裕の部屋のドアを叩いた。

もう真夜中だ。

起きてるわけないと思いながらも、3度、ノックをした。
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