第1章 Season 1 同居人
勘違いしちゃなんない事はわかってるし、裕がそんなつもりないこともわかってる。
それでもわたしにはそれが嬉しくて、黙ったまま口元を緩めた。二人の優しさがぐっと胸に染みた。
それから息をふっと吸い込むと、繋いだ両手をぐっと振り上げて
「さぁー、若いもんに元気もらったし、おばちゃん、がんばるよー!!」
と叫ぶ。
「ちょっと、慧さん。自分でおばちゃんって言ったら負けだよー」
裕が笑いながらそう言った。
太陽がそろそろ沈みきりそうな時間になっていた。
家に戻ると、翼が寧々と乃々を連れて降りてきた。
「ママー、おかえりぃー」
寧々と乃々がわっと駆け寄ってきて抱きついてくれる。
「うん、ただいまー。つばさっち、ありがとう。せっかくの休みだったのに、ごめんね。寧々たちそっちに行ってたなんて……気づかなかった。ほんとごめんね、大変だったでしょ?」
「いえいえ、久しぶりだったから楽しかったですよ。ねー、寧々ちゃん」
「うん。ねね、つばさっちとおりがみでいっぱいどうぶつさんつくったんだよぉー」
「ねー。あ、慧さん、何か手伝いましょうか?」
「あー、ありがとう。そだねー、それじゃぁとりあえずお米お願いしてもいいかなぁ」
乃々を足にまとわりつかせたまま、キッチンに向かって歩く。
寧々は私から離れ今度は「たくちゃんたくちゃん」って玄関で靴を脱いでる拓によじ登ろうとしていた。
「寧々ちゃん!!待ってコケるけ!!」
寧々に体重をかけられて、拓がバランスを崩した。
「ねーママー、きょうのごはんなにー?ねねおなかぺっこぺこー」
「ハンバーグだよー」
私の代わりに裕が拓の背中に乗っかっている寧々の質問に答えてくれた。
自分がリクエストしたのだとアピールしたいのだろうか。
「はんばーぐ!?わーい、ねね、ママのはんばーぐだいすきぃー」
寧々と裕が嬉しそうにわーいわーいとはしゃいでいる。
帰り道の裕とはまた違う、いつもどおりの姿になんだか安心感を覚え、子供がたくさんいるような感じに思わず悩んでた事さえ吹っ飛んでしまうような自分に笑ってしまいそうだった。