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私と彼らの生活

第1章 Season 1 同居人


帰り道、大きな買い物袋を持って、人通りの少ない住宅街を歩いていると、ふと裕が私の右手を握ってきた。

今まで一緒に何度も行ったことはあるけど、こんなことされたのは初めてだ。

驚いて見上げる私に、

「何、思いつめてんのか知らないけど、俺らは慧さんの味方だからね?だから、あんな不安そうな顔しないで、ね?」

笑いかけて、繋いだ手にぎゅっと力をこめてくれた。

それに気づいた拓が、

「なになに?ずるい、よぅわからんけど」

私が左手に持ってた荷物を取り上げて、空いた手を握り締めてきた。

両手をぎゅっと握られて、娘と繋ぐ手の感触とは違う事に思わず顔を赤らめてしまう。

そっか、男の人の手ってこんな感触だったっけ。忘れてたや……。

「慧さん、手ぇちっさいね」

「ほんまじゃー。そういうのって、実際触ってみんと気づかんもんじゃね」

何も言えず、裕と拓にはさまれてまるで子供のようなポジションに、私はうつむく。

「あはは、慧さん赤くなったー。照れてるの?」

「ほんと?あ、ほんとじゃー」

裕と拓からかってくる。

「……だって、こーゆうのって、なんか久しぶりっていうか、ちょっと恥ずかしいよ」

二人に手を握られたまま歩きながら、私は言い返す。

もう治さんとのそういう時期は過ぎた。

最後に手を繋いだのは、いつだったっけ?思い出せない。

「……俺らじゃ、治さんの代わりなれないのはわかってる。でも、手を繋いだり、話を聞いたげたりして、慧さんの気持ちが少しでも楽になるんなら、許されるんじゃないかなって思ったんだよ。だからさ、あんな不安な顔しないでよ。笑ってるほうが慧さんらしくていいよ。慧さん、がんばってるんだから、あんま一人で思いつめちゃだめだよ」

何が、とか何で、とか問うんじゃなくて、ただ、そっと私という存在を受け止めてくれてる言葉が嬉しくて、目頭が熱くなった。

「…うん、ありがと…」

こらえるつもりだったんだけど、つっと一粒、頬を伝ってしまう。

「あー!!裕が泣かしたー!」

拓が茶化す。

「もー裕、今のは要約したらなんか慧さんが好きですって言いよるように聞こえるよー?」

「えぇ?今のってそんな風に聞こえた?うわー」

拓の突っ込みに、裕が慌てた声を上げそっぽを向いた。
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