第6章 その手で守って激しく癒して
ふわりと笑った左馬刻さんに、まるで初恋でもしているかのように、トクンと心臓が反応する。
「」
「はい?」
「助けるのが遅くなって、すまねぇ……もっと早く助けれてたら、あんな目に合わずに済んだのによ……」
左馬刻さんが私に頭を下げる。
「痛かったよなっ、怖かったよなっ……」
殴られた頬を撫でながら、今にも泣きそうな、苦しそうな顔で左馬刻さんが何度も謝る。
左馬刻さんのせいじゃないのに。隙だらけで危機感のなかった私が悪いのに。
「左馬刻さん……謝らないで。あなたのせいじゃない。あなたは何も悪くないよ。だって、ちゃんとっ……助けに来て、くれたからっ……」
彼の感触がまだ体に残っている気がする。痛くて、怖くて、気持ち悪くて、涙が溢れた。
ベッドに腰掛け、頬を包まれる。
「怖く、ないか?」
左馬刻さんが怖いわけない。こんなにも優しくて、温かくて、安心する手を、私は他に知らないから。
頬を包む手に手を添え、頬を擦り付ける。そして、ゆっくり顔が近づいて、唇が触れた。
何度も角度を変えて、触れるだけのキスをする。
長い時間繰り返して、額をくっつける。
「……退院したら、あのクズ野郎の事を一ミリも思い出せなくなるくらい、お前の全部、俺で上書きすっから……」
「うんっ……。左馬刻さんで、いっぱいにして……」
強く抱きしめられるこの痛みは、凄く心地よくて、大人しく体を預けた。
左馬刻さんの腕の中は、温かくて私が一番落ち着く場所で。ボロボロの私の全てを癒す、楽園だ。
心地よくて、ウトウトし始めた私の髪を撫でてくれる。
そのまま私はまた意識を手放した。
次目が覚めた時には、窓の外は暗くて。
手に温かい感触。左馬刻さんの手が、私の手を握っていて、頭をベッドへ突っ伏して眠っている。
髪を撫でる。相変わらずふわふわでサラサラ。
触れれば触れるほど、次から次へと愛おしさが溢れてくる。
「ん……くすぐってぇ……」
「ふふ、すみません、つい気持ちよくて」
顔を上げて目を細めて笑った左馬刻さんは、何処か疲れている様子だった。
「左馬刻さん、こっち来て下さい」
私は自分がいるベッドの隣を少し空けて、ポンポンとベッドを叩く。