第4章 ヤクザと生贄彼女
神宮寺先生の紹介してくれた、専門医の先生の診察を受け、完全ではないものの、火傷の痕もよくなると言ってもらえた。
待合室で待つ左馬刻さんが、私に気づく。
経緯を話す。
「ただ、その……お金がかかるので……出来れば仕事をさせて欲しいです……」
「ああ? アホか。お前の全部ひっくるめて俺様のもんだろーが。お前がんなもん気にすんじゃねぇ」
「だ、駄目ですよっ! 結構かかるみたいだしっ……そんな事までお世話になるわけにはっ……」
私が断る素振りを見せると、不機嫌に拍車がかかる。
「ちっ、るせぇな……あんまくだんねぇ事ごちゃごちゃ言ってっと、今ここでその口塞いじまうぞ。それとも、塞いで欲しいのか? ん?」
顎を掴まれ、唇が指でなぞられた。
ゾクリとして、顔が熱くなる。
「物欲しそうな顔してんじゃねぇよ」
口角を上げて笑う左馬刻さんから、目が離せない。
名前を呼ばれ、会計を済ませると、神宮寺先生にご挨拶をしてから病院を出る。
タバコに火をつけて息を吐く左馬刻さんに、診察代を出してもらったお礼を言って、車に乗り込む。
今日は左馬刻さん自身が運転席にいるから、私は自然と助手席に座らされた。
「腹減ってねぇか? 飯でも……」
そう言ったところで、左馬刻さんのスマホが鳴る。
相手は前にかかってきた銃兎とかいう人だ。
ヨコハマのマンションに着いてから、左馬刻さんとは別れて、マンションに入ろうとした。
けれど、それは叶わなかった。
口に布のようなものを当てられ、暴れても意味がなく、車に乗せられると、私は意識を失った。
その瞬間、鼻に覚えのある香りがした気がした。