第4章 ヤクザと生贄彼女
たいして散らかってはないけれど、お昼まで掃除をしたり片付けたりしながら、時間を潰していた。
「そろそろ、買い物行こうかな」
食材以外にも好きな物を買えと、多めに貰ったけれど、特に欲しい物は何も無い。
とりあえず、出かける準備をして渡された鍵で戸締りをする。
久しぶりに街を一人で歩く気がする。
前に左馬刻さんに見つかった、大人の店が並ぶ場所の前を通り過ぎようとした。
「ねぇ、ちょっとアンタ」
背後から声がして、振り返るとしっかり化粧をして、少しキツめの顔をした女性が、腕を組んで私を睨みつけている。
知り合いにこんな人はいない。そもそもこの街は地元じゃないし、あまり人と関わって来なかったから、知り合いなんていないけど。
「あんた、左馬刻さんとどういう関係なわけ?」
これは、学園モノでよく見るやつだ。
「どういうと言われても……」
どう説明するべきか分からず、言い淀んでいると、それが気に入らなかったのか、突然髪を掴まれる。
「こっち来いよっ!」
「痛っ、痛いっ……」
そのまま引っ張られて、建物の裏に連れて行かれる。
人気のない場所に着いて、壁に叩きつけられる。
背中を打って、息がしにくくて、咳き込む。
「左馬刻さんが全然私に構ってくれなくなって、他にまた女が増えたのかと思ってたら、最近一人の女に熱上げてるって聞いてどんな女かと思えば。あんたみたいな地味でブスな女なんて……。特定の女作らなかったのに。どうやって左馬刻さんを誑かしたのっ!?」
早口に捲し立てられ、胸倉を掴まれる。
何かに気づいたように、動きが止まり、乱暴に服を開かれる。その拍子に服のボタンが弾け飛ぶ。
「何、よ……これっ! まさか、これ全部左馬刻さんが……」
キスマークと歯型の事だろうか。私が肯定する前に、目の前の女性の顔が歪む。パンッという音の後に頬が熱くなる。
「いい気になんなよっ……あんたなんか……どうせすぐ飽きられて捨てられるんだからっ……」
この人は、左馬刻さんが好きなんだろうか。
「こんな汚い体した女なんかにっ、私が負けるわけないっ! あんたみたいな気持ち悪い女っ、左馬刻さんには似合わないんだよっ! 左馬刻さんは、絶対渡さないんだからっ!」
汚い、気持ち悪い、か。