第3章 飼われた鳥は自由か不自由か
少し上を向けば、すぐ近くに左馬刻さんの顔がある。
寝顔まで綺麗。眉毛の形も綺麗で、まつ毛も長くて、鼻筋が通ってて、唇もいい形で、何もかもが整ってて、何かズルい。
指で頬をつついてみる。反応がないから、撫でてみる。
「んぅー……」
少し眉間に皺が寄り、身動ぎするけれど、起きる気配はない。
今なら、腕から出られると思って、慎重にベッドから抜け出す。
起こさずに上手く出られた。
とりあえず急いでシャワー浴びて、朝食の用意だ。
バスルームでシャワーをサラッと浴びて、体を拭き終わると、鏡をふと見る。
だいぶ痣は薄くなって来たけれど、傷と火傷はまだ消えそうにない。
そして、相変わらず傷と火傷の上から、まるで守るかのようなキスマークも、沢山。
「ほんと、キスマーク付けるの好きだな……」
もちろん、他の場所にもある。ちなみに、少し前からご丁寧に、歯型まで付けられるようになった。
まるで、所有物だと言われているかのようだ。
「、ここにいたのかよ」
「ぁ……んっ……」
後ろからお腹に手が回されるように抱きつかれ、うなじを甘噛みされて、背中がゾワリとする。
「急にいなくなんじゃねぇよ、ビビんだろうが……」
「あ、すみません。眠く、なくて……朝ごはん作ろうと思……って、んっ……」
首筋をガジガジと齧られる私の耳に、遠くからスマホの音が聞こえた。
「ちっ……一体誰だよ、俺様の邪魔しやがるクソ野郎はっ……」
不機嫌を顔に貼り付けて、また部屋に戻って行く。
軽く部屋着に袖を通し、同じように部屋に戻る。
「おい銃兎、それはお前の……あ? んなもん、そっちで……あぁ? ちっ、わーったよ。すぐ行く」
眉間にある皺を深くしながら、スマホをベッドに投げ着替えを始める。
「悪ぃ、これから出るから飯はいらねぇ。家ん中なら何しててもいいが、あんま外は出んなよ」
「はい……行ってらっしゃい。気をつけて下さいね。あっ! あの」
「何だ?」
「食材の買い物くらいなら、してもいいですか?」
「あぁ、まぁ、そんくらいなら……」
そう言って、お金を渡される。断ると物凄い鋭い目で睨まれた。
受け取らないと、嫌な予感がするので仕方なく受け取った。