第3章 飼われた鳥は自由か不自由か
車の隣で、後ろで手を組んで立ったままこちらを向いている、組員さんのところまで来た。
「待たせてしまって、すみません。ありがとうございました。気をつけて、帰って下さいね」
私はずっと言えなくて気になっていたので、スッキリした。
目の前では驚いている組員さんが、小さく「あ、あぁ、うっス……」と言った。
もう一度頭を下げて、左馬刻さんの元に戻ると、タバコを吸いながら、こちらを赤い目がチラリと見た。
「お前何やってんだ。つか、俺様を待たせるとは、いい度胸だな。んな事した女は、お前ぐらいだぜ」
「す、すみません……」
フッと柔らかく笑った顔が綺麗で、心臓が跳ねた。
左馬刻さんのマンションに入ると、まず説明を受ける事になった。
明日から、左馬刻さんの身の回りの世話をするのが、私の仕事だそうだ。
そんな事でお金のケジメなんて、つくのだろうか。
私に拒否権はないので、受け入れるしかない。
「あの……どうして、こんなによくしてくれるんですか? 直接的ではないにしろ、左馬刻さんにとって、私は組に迷惑かけた側の人間なのに……」
ソファーに座って、いつの間にかタバコを付けて吸っていた左馬刻さんが、天井を見ながら言う。
「たいした意味はねぇよ。住み込みの仕事とでも思っとけ」
言って、煙を吹いた。
こうして、私は左馬刻さんの元で過ごす事になった。
翌日の朝、左馬刻さんのベッドで、左馬刻さんの隣で目を覚ます。
気だるい体をゆっくり起こし、左馬刻さんを起こさないようにベッドから降りようとした。
「ん……どこ、行くんだよ……」
後ろからお腹辺りに腕が回された。
「おはようございます」
「んー……」
眠そうな顔で唸る左馬刻さんが、私の腰辺りに頭を擦り付けて来る。
何だこの可愛い生き物は。いつもがいつもなだけに、そのギャップたるや。
「朝ごはん作りますね」
立ち上がろうとするけど、左馬刻さんの腕は離れなくて。
「まだいい……来いよ……」
再びベッドへ引きずり込まれる。そのまま腕の中に収まってしまう。
すぐに頭上から、規則正しい寝息が聞こえる。
そして私は身動きが取れなくなってしまった。
でも、眠くもないし、退屈になってきた。