第2章 分からない人
そんな価値が、自分にあるはずがない。
「返済って……どういう仕組みに、なってるんでしょうか?」
タバコを一吸いし、天井を見ながら口を開く。
「あー……何も考えてねぇな……」
どうリアクションしたらいいのか分からない。
「まぁ、適当に俺様が飽きるまでだな」
返済までに飽きられたら、その時は本気で私は終わりなんだろう。
碧棺さんは立ち上がって、素早く髪を乾かし終え、着替えながら私を見ずに言う。
「俺は今から出る。明日車を寄越すから、お前はゆっくりしてろ」
それだけ言うと、こちらにカツカツと歩み寄ってくる。
「逃げんなよ?」
触れるだけなのに、唇を持っていかれそうなねちっこい触れ方でキスをし、悪戯っ子みたいな、意地の悪い顔で笑う。
ドクンと心臓が跳ねた。
これを抱く女全員にやっているのなら、とんだタラシだ。
私みたいな経験不足な女の心臓には、かなり悪い。
「愛人てこんな感じなんだろうか」
私とあの人の間には、愛人関係程の愛情なんてないけれど。
シャワーを浴びようとバスルームに移動して、鏡の前に立つ。
「ぅわ……凄い……」
薄くなり始めた痣の上からマーキングされたかのように、体中に散りばめられた赤い印達。
「キスマークなんて……初めてだ……」
ただ突っ込まれるだけの行為しかして来なかった私は、碧棺さんの所有物だと言われてるみたいで、ムズムズするような、不思議な感覚だった。
「多分、あの人からしたら、こんなのたいした意味なんてないんだろうな」
苦笑して、シャワーを浴びる。
擦ると消えてしまいそうで、勿体ないとか思ってしまってまた苦笑する。
シャワーを終えたら、また眠くなり、ベッドでゴロゴロしてると、いつの間にか眠っていたらしく、車を回した組員さんに起こされた。
最初の頃より、組員さんも心なしか少しだけ優しい。
自宅に返されたけれど、ここ最近仕事をサボっていたせいか、クビになったので、新しくバイトでもしようかと考える。
「碧棺さん、許してくれるかな……」
いつでも彼の都合で動かないといけないから、それが許されるような仕事じゃないと駄目なんだけど。
そもそも、そんな仕事あるのかすら疑問だ。