第1章 出会いは貴方が仕掛けた罠
あの優しくて、大きくて、温かい手が私に触れる。
もう、無理だ。
「泣く程嫌なら、何故抵抗しない」
泣いて言葉にならない私の体を支える様に抱き起こし、理鶯さんの綺麗な目が私を見つめる。
この涙は、嫌だから出てるものじゃないのに、言葉にならない。
ただ、理鶯さんに縋り付くしか、出来なかった。
そんな私を、理鶯さんはやっぱり優しく撫でてくれて。
たまらなくなって、嗚咽に混じって、必死で言葉にする。
「り、お……助け、てっ……私っ、生きたいっ!」
理鶯さんからしたら、意味が分からないだろう。でも、私は彼に縋って、泣くしか方法を思いつかなかった。
「好きっ……り、ぉ、さっ……ひっ……理鶯っ……一緒に、いたいっ……」
泣きじゃくる私を、理鶯さんは強く、そして優しく抱きしめた。
そのまま横抱きにされ、私は用意されていた車に乗せられた。
何故か、理鶯さんの膝の上に横向きに座らされたまま。
まるで、宝物みたいに包まれて、私は意識を手放した。
その一瞬、頭にキスが降った気がした。