第1章 出会いは貴方が仕掛けた罠
覚悟を決めて、串に刺さった四本足のモノを口に入れた。
「っ!? 美味しい……」
見た目で想像していた味とは、全然違った。
「それはよかった。好きなだけ食え」
さすがにたくさんは食べれないけれど、理鶯さんの厚意に甘えさせてもらった。
食事が終わり、私はまだ少し休憩していた時、理鶯さんはテントの中にいた。
空を見ながらボーッとしていると、理鶯さんがテントから出てきた。
「今日はもう遅い、用意はしてあるから、泊まっていくといい」
「そんな事まで、甘える訳にはいきませんっ!」
「遠慮するな。それに、今からどうやって帰るつもりだ?」
理鶯さんの質問にドキリとする。
目を逸らして言い淀む私を、理鶯さんの純粋な目が突き刺さる。
何も聞かないけれど、全てを白状させてしまうようなそんな目。
「私、もう、帰るつもりがないんです」
そう言って笑った私の顔は、酷い顔だったのだろう。
理鶯さんの眉が少しピクリと動いた気がした。
大きな体が近づき、また私は抱えられてしまう。
お姫様抱っこなんて、された事なかったなとか思いながら、理鶯さんの顔を見つめる。
そのままテントへ向かう理鶯さんに、大人しくされるがままになる。
テントへ入り、寝かされ、体に毛布が掛けられる。
「今はとりあえず、小官がついていてやるから、嫌な事は忘れて安心して眠るといい」
「ふふっ、理鶯さんはいい人、ですね……」
言うと、理鶯さんはフッと笑った。
見守るような笑顔と、髪を撫でる優しい手に、瞼が閉じていく。
こんな安らぎの時間なんて、両親がいなくなってから今まで、なかったような気がする。
理鶯さんは、ほんとに不思議な人だ。
こんな何処の誰とも分からない女に、ここまで良くしてくれて。
こんな優しさ知ってしまったら、決意が揺らぐじゃないか。
私は、どうしたらいいんだろう。
また涙が出て、頬を濡らす。
そんな私の涙を、理鶯さんは指ではなく、次は唇で拭う。
そのまま、私は理鶯さんの首に腕を回して抱きついた。
優しく抱きしめ返してくれて、背を撫でてくれる。
こんな面倒な女に、何でここまで。