第2章 貴方の優しい全てに包まれて(その後)
開いた口の間から、理鶯さんの舌が入ってくる。
舌が絡め取られ、どちらともつかない唾液が顎を伝う。
「んぁ……はぁ……ぅんンっ……」
こんなに気持ちいいキス、した事ない。
ゆっくり、優しく愛撫されてるみたいなのに、何処か力強くねっとり絡みつくみたいな。
上手すぎる。
「理鶯さぁーんっ!」
そんな雰囲気の中、緊張感のない声が響いた。
体がビクリと跳ねて、唇が離れてそちらを見る。
人の姿が見えないけれど、明らかに叫んでいる声はしっかり聞こえる。
「帝統か」
声だけで人を当てるという事は、結構な頻度で来ているのだろうか。
しばらくすると、緑のコートを来た髪の長い男性が現れる。
「ちわっす、理鶯さん……て、あれ? お客さんスか?」
彼がすぐ私を見つけて質問する。
「彼女は、小官の恋人だ」
「へぇー、理鶯さん彼女さんいたんスね。あ、もしかして、俺……邪魔しました?」
恋人と言われた事と、何をしてたかを予想された事に、顔が熱くなって顔を隠すように俯く。
「そうだな。いい雰囲気ではあったな」
「ちょっ、理鶯さんっ!」
何が悪いとでも言いたそうに、理鶯さんが私を見る。
「あー……何か、すんません……」
苦笑した帝統と呼ばれた男性は、気まずそうに頭を掻いた。
「いや、問題ない。今日はどうした?」
「いやー、それが全額スっちまって……」
「そうか。食材は余っているから、すぐに準備しよう。すまないな、少し待っていてくれ」
頭を優しく撫でられ、くすぐったくて笑う。
理鶯さんらしいなと思う。こうやって、困ってる人がいたら迷いなく助ける。
だから人が集まるんだろうな。
理鶯さんを見つめている私は、刺さるように注がれる視線に体が固くなる。
〔す、す、凄く……見られてる……〕
恐る恐る視線の方を見ると、ニカッと白い歯を見せて無邪気に笑う、帝統と呼ばれた男性と目が合う。
「初めまして、俺有栖川帝統って言います。よろしくっ!」
「あ、は、初めまして、です。よろしくお願いします」
有栖川さんは、ギャンブラーでよく理鶯さんにこうやってお世話になりにくるらしい。