第2章 好きな人とは
「それって、我妻君が好きだから、ってこと?柑橘系が好きだったのは単なるきっかけで、我妻君のことが気になるから自然と黄色とかオレンジとかに目が行くのかもね」
「そこまではまだ分かんない。でも我妻君を見てると元気になるのは本当だし、制服採寸の時に見た笑顔がまた見たいとは思う」
もっと知りたい、そう思うことが好きとか付き合いたいとかそういう意味になるのか華には判別しかねていた。だからこそバレンタインというイベントもまだ自分には関係ないと思っている、けれどせっかく作るなら善逸にあげたいと思う心情に華自身少しずつ気付き始めた。
「とにかく、麻衣が稲玉先輩に渡せるレベルのチョコを頑張って作らなきゃね。私もせっかく渡すなら喜んで欲しいし」
「うん、手伝い頑張るね!」
そもそも戦力外だから、とでも言いたげな苦笑で手伝いを頑張ると言い切る麻衣。華はそれでも頑張ろうとする麻衣が可愛いと思う、不器用でも何でも気持ちがこもるように大切に作ることが一番大事なんだろう。そんな気持ちがこもったチョコはきっと相手にも温かい気持ちを伝えてくれるはずだ。
そうこうしている内に迎えた金曜日。放課後のチャイムとともに麻衣は慌ただしく教室を出て行った、華も今日はのんびりしていられない。麻衣と相談して決めたレシピに書いてある材料調達のため駅前のスーパーに向かうと、バレンタインコーナーが特設され沢山の女子がきゃあきゃあとチョコレートを選んでいる。その横を過ぎて食品コーナーに向かうと見慣れた金髪が見えた。
「我妻君?」
声を掛けると野菜を手に持ったままの善逸がこちらに振り向く、華が「やほ」と手を挙げると善逸の隣の人物もこちらを振り向いた。黒い髪、少し不機嫌そうな黒い瞳。
声をかけたらまずかったかな。
その考えが顔に出ていたのか、善逸が「華ちゃんも買い物?」といつものように優しく話しかけてくれる。
「おい善逸、これで全部なら会計してくんぞ」
「あ、ごめん獪岳。はい、これお金」