第2章 好きな人とは
「わ、あ!ありがとう!ぶつかってしまってスミマセン」
不良だと思い込みつい敬語で謝ってしまった華。その姿がおかしかったのか善逸が困ったように笑いながらスマホを華の手に渡す。その時、画面に手が触れ液晶画面が点灯した。
「柑橘系のフルーツが好きなの?」
点灯した待ち受け画面はオレンジやレモンのフルーツの画像。元々スマホに入っていた初期画像のものであり、柑橘系が好きな華は少ない初期画像の中からこの画像を選んだ。善逸の問いかけにコクリと頷くと、そっかと優しい笑顔を見せたのだった。
そうだ。あれ以来、ビタミンカラーの物に目が留まるようになったんだ。
華はおよそ1年前の事を思い出し、少し笑う。だって不良かと思った三人は同じクラスになり、皆それぞれ見た目と中身のギャップが凄くて入学してからとても驚いたから。ピアスの男の子は真面目で優しい家族を大切にしているし、金髪の男の子はまさかの風紀委員、美少年は…
「嘴平君だけはあのままだわ」
制服を着たくないと採寸を嫌がっていたあの時、そして入学以来制服をまともに着ているのを見たことが無い。
「…華?どこ飛んでるの?お~い」
ヒラヒラと顔の前で手を振られて目の前の麻衣が呆れた表情になっていることに気付く。そう、まだカフェでティータイム中だった。そして更に気付く。
「華ちゃんはそんなに俺に興味無いんだ…俺嫌われてんの?」
ブツブツと呟き完全にイジケモードの善逸が隣に居ることに。
「いや、だから。嫌ってないって…」
「じゃ、俺に興味ある?」
なんでそうなる。華はつい心の中で突っ込んだ。
善逸の中では嫌っていない=興味あるという図式が成り立つのかと、華は善逸の問いにハハハと乾いた笑いを返す。
「なんでそんなに興味が有るか無いか気にするの?こうやって友達として遊んでる以上、興味が無い筈はないでしょ?」
「それを言うと炭治郎達も一緒じゃん!」
「え?うん…それが?」
首を傾げた華を見た瞬間、善逸は言葉がつっかえたように「ぅぐっ」と言うや否や学年でもトップと言われる瞬足でカフェを出て行った。その後ろ姿を見送った麻衣は「あぁ、なるほど」と呟いている。