第1章 ─ しのぶれど ─
「お嬢さん。着きましたよ」
「………ん……ここ、どこ……?」
人力車に揺られながら眠ってしまったらしい、優しい声に起こされ目を覚ました。
「私の家だよ。さぁ降りて」
「………!すみません、私ってば!重いのに!」
意識がはっきりすると時任さんの肩に自分の頭が凭れかかっていることに気付いた。
眠っている間中ずっと体重をかけてしまっていたようで、慌てて身体を離してお詫びをする。
すると、時任さんは何ともないように小さく微笑んで……
「いえいえ。とても可愛いらしい寝顔でしたよ」
と、人力車から降りる私に手を差し伸べてくれた。
王子様……いや、国王様?
まるで異国のレディーのような扱いをされて、思わず顔が緩んでしまう。
(お姫様になった気分……)