第8章 ─ はるすぎて ─
「………しなくていいから」
「えー…でも私、してみたいです」
疲れたような顔する旦那様に、頬を膨らませた。
もう少しだけ、粘ってみる。
「旦那様に教えて欲しいなぁ……駄目ですか?」
そう言って上目遣いでお願いすると、旦那様は恨めしそうな視線を向けた後に、甘い口付けを落とした。
「はこういう時だけ我儘だね」
「はい!これからもずーっと、私だけを甘やかしてくださいね!」
そして、そっと私を抱きかかえて立ち上がり、自室へ。
チリン……と、また、椿が夏の夜風に揺れた。
─ 終 ─