第5章 ─ わすれじの ─
行ったことないので分からないけど、政府関係者まで来るということは重要な集まりなのだろう。
屋敷で開かれる晩餐会には何度も顔を出してるけど、きっとそれよりも大勢の来客がいらっしゃるのね。
この二年の間に糸魚川さんからみっちり淑女教育を受けているから、大丈夫だとは思うけど……。
「ホントに私を連れて行ってよいのですか?」
「ああ。仕事の話は私がするから、は気を楽にして笑顔でいてくれるだけでいい。こんな可愛いお嬢さんが私にいることを来賓の方達に自慢したいんだ」
ニコッと微笑まれて、キュンと胸が鳴った。
「喜んで!!」
旦那様の為なら天国でも地獄でも、どこへだってお共します!
ああ、でも改めて考えると嬉しいかもしれない。
旦那様が私を付き添いに選んでくれたということは、私を特別な存在だと思っているわけで。
それに私たちの仲睦まじい姿を周囲に見せつける絶好の機会だ!
題して【あれ?時任社長ってあんなに若くてしっかりした奥様がいたんだ…へぇー。】大作戦!
周りから固めていく手もあるよね!
「ふふふふふ」
深く考えずにほくそ笑む私は、隣いる旦那様の瞳が微かに陰っていたことに気付かなかった。