第4章 ─ いまはただ ─
の部屋の前で止まって、障子を開ける。
が来てから初めて入る彼女の部屋は、調度品は最初に揃えたままに変わってはいないが。
匂いが違った。
花のような若い娘の甘い香り。
すぐに意識を切り替えて、布団の上にを降ろそうとすれば、小さな声が私を呼んだ。
「んっ……だん、な様……」
「布団に運んだから、そのまま寝ていいよ」
おそらく寝惚けているのだろう。
薄目を開いて、徐に両手を私の首に回した。
「もっと、抱っこ…して……」
「今日のは甘えん坊だね」
座り込んだまま、ぎゅっと抱き締められて苦笑する。
「私だけ、の……旦那様です…から……」
鈴のような声が鼓膜を擽る。
身体から降ろそうとすれば、子供のようにイヤイヤと頬を擦り付ける。
目が眩むほどの甘い匂いと、柔らかな胸の感触が当たり鼓動が跳ねた。