第4章 ─ いまはただ ─
すっかり夜も更け、夕飯を食べ終わった後、が二階の縁側に風鈴を付けたいというので手を貸した。
ヤチヨにお茶を入れてもらい、と共に風鈴の音色を聞きながら夏の夜空の下で涼む。
私の膝の上でウトウトとするに苦笑し、お茶を啜る。
早く寝床に着けばいいのに、まだ私と一緒にいたいと珍しく駄々を捏ねた末にこれだ。
「だんな、さまぁ……」
舌っ足らずな声が鼓膜を擽り、微かな重みが胡座を組んでいた太腿にかかる。
とうとう眠ってしまったらしい。
不安定なこの体制のままでは首を痛めてしまうだろう。
それにそろそろ夜も冷え込む時間だ。
「あら、お嬢様はお休みですか」
部屋をひとつ挟んだ廊下を通ったヤチヨが、畳まれた着物を手に近寄ってきた。