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*喋よ花よ*-大正色恋浪漫-

第4章 ─ いまはただ ─


***


「…………っ」


そこまで思い出し、自分の愚かさにゾッとする。

あれは、近くの大人に対する幼子のような純粋な好意であって、一瞬でも違う意味に捉えてしまった私は、とうとう焼きが回ってしまったのだろう。

をいつかはどこかへ嫁がせる。

そう決めたのは自分だというのに───


このままいけばそう遠くはない日に、はこの家を出ていくだろう。

元々器量が良く、人に好かれる性格をしてたけれど、近頃はまた身体付きも女性らしくなり、顔立ちも大人びてきた。

それでいて、性格はそのままに、愛嬌溢れる。

彼女を嫁にしたい男など、山ほどいるだろう。

……そこら辺の男には絶対にやらないが。


の素直な行動や言動は癖になる。

旦那様と満面の笑みで呼びながら、着物の袖を揺らし駆け寄ってくるあの姿。

実の父親でなくとも、愛らしいと思ってしまう。

………時々、素直すぎて戸惑うこともあるが、もしが屋敷から出ていけば、寂しいと感じてしまうだろう。

だからそれまで、目一杯愛情を注ごうと、顔を合わせるたびに困ったことはないか、欲しいものはないかと、ついつい聞いてしまう。


『遊女を口説こうとする上客ですか?』


と、笑えない忠告を佐渡に言われてからは自重し、あまりしつこく聞かないように気を付けている。

しかし。

風鈴くらいなら、許されるのではないだろうか……

そういえば帰宅する途中、屋敷の近くで風鈴売りを見かけた。

今行けば間に合うかもしれない。

……よし。

自室へ戻り財布を取ると、私は再びの元へと向かった。




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