第3章 ─ かくとだに ─
「どうして──」
きっと私は今、酷い顔をしているだろう。
旦那様に見られたくなくて、前を見つめたまま言葉を続けた。
「お父様は、私も一緒に連れて行ってくれなかったの?残った私のことなんかどうでもいいの?私といるよりお母様のところがよかったの?どうして……」
一度出た言葉はなかなか止まってくれなくて、滲んだ水平線を睨むように見つめる。
「私を……一人にしたの……?」
旦那様は何も言わない。
さっき自分語りは面倒くさい子だと反省したばかりなのに、分かっていても溢れて止まらない。
「きっと……お父様は私のことなんて嫌いだったの。私を産んだせいでお母様の具合が悪くなったから、私のせいでお母様が死んでしまったの。それで、仕事もうまくいかなくなって、借金もいっぱいしちゃって、だから、お父様も死んでしまったの………私の、せいで……全部、私の……」
なんで余計なことまで言ってしまうんだろう。
この赤い風車のせい?………いや、あの頃の小さな自分が、両親と笑いながら私を責めている気がして、ただ自分が楽になりたいだけで、こうやって旦那様に懺悔してる。
そんな自分も嫌になって、涙が止めどなく溢れてくる。