第3章 ─ かくとだに ─
風車を受け取って、たんぽぽのようにふーっと息を吹きかけてみると、和紙で出来た羽根の部分がクルクルと回った。
『は大きくなったら何になりたい?』
『んーお嫁さん!』
『あら、誰のお嫁さんになるの?』
『おとーさまの!』
『父様のお嫁さんは母様だから、それは叶えてあげられないなぁ』
笑顔でそんな会話をしたのは、もう随分前のことだ。
……ああ、駄目だ。考えないようにしてたのに。
胸の深い場所にしまい込んだまま、平気なふりをして、今まで深く考えることを避けてきた。
────お父様のこと。
目の前に広がる清らかな景色とは、真逆の真っ黒な重たい感情に息が詰まる。
お父様は、何故私を置いて死んでしまったの…?
苦しくなって、胸を抑えた。
「……私、愛されてなかったのでしょうか?」
独り言のようにポツリと呟く。
………また何を言っているのだろう。
せっかく旦那様が気を利かせて連れてきてくれたのに、これじゃあ台無しになってしまう。
だけど、止まらない……旦那様の前だと本音を隠せなくて、いい子でいたいと思うのに、心のどこかで全部を受け入れて欲しいと思ってしまう。