第3章 ─ かくとだに ─
たんぽぽの綿毛を摘んで、ふーっと飛ばしていると温かい気配が隣にきて、懐から何かを取り出した。
「私の可愛いお嬢様に、これをどうぞ」
目の前には、赤い風車。
あの子が持っていたものと同じだから、きっと旦那様が飲み物を買いに行くついでに、女の子の両親から風車を買ったお店を聞いたのだろう。
………いや、違う。飲み物はただの口実で、最初からあの親子を追いかけてくれたんだ。その方が旦那様らしい。
「もう……なんでこんなことするんですか?」
「余計なことだったかな」
声を出したら泣いちゃいそうで、強く頭を左右に振った。
旦那様はいつも私の弱い部分に触れる。
でも、それは押し付けがましい親切心なんかじゃなくて、そっと寄り添うような、さりげない優しさで私には心地よかった。