• テキストサイズ

*喋よ花よ*-大正色恋浪漫-

第1章 ─ しのぶれど ─


 
「「は?」」


男と私の間の抜けた声が重なった。

だって、信じられない。

一万圓と言えば、借金を返せて家を建てたとしても、お釣りがきてしまう。


「旦那…正気ですかい?一万ですぞ?千圓の間違いじゃないですか?」

「そ、そうですよ!いくらなんでも一万は高すぎますって!」


思わず男に便乗してしまう。

そんな私に時任さんは呆れたように溜息をついて、グイッと私の手を引っ張った。

肩を抱き止められながら、時任さんは後ろに控えていたお付きの男性に視線を送り、なにやら目配せをしている。


「後は彼が引き継ぎますので…さぁ。君は私と行こう」


ポカンと口を開ける男と、お辞儀をして見送る男性を置いて、彼は私の腕を引く。


「あ、あの!時任さん、わたし──」

「色々言いたいことはあるだろうけど、まずは車に乗りなさい」

/ 132ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp