第3章 ─ かくとだに ─
「あ…………」
ほぼ無意識に立ち上がって、踏まれないように急いで駆け寄り拾い上げた。
「……良かった」
壊れていないか確かめると、離れていく女の子を追いかける。
「お嬢ちゃん。これ、落としましたよ」
声を掛けると女の子は振り返って、パチパチと瞬きをした後。
「あー!日菜子のだ!」
とお父さんの手を一旦離して、私の前まで近寄ってきた。
「ありがとーお姉ちゃん!」
「ううん。どういたしまして」
可愛い笑顔につられるように、私もニコリと笑う。
差し出した風車を女の子は大事そうに手に持つと、両親の元へ戻っていった。
お母さんが笑顔で頭を下げて、お父さんも軽く会釈をする。
人混みに消えていく三つの影を見つめながら、私は昔のことを思い出した。