第3章 ─ かくとだに ─
焼き鳥を受け取って、広場の長椅子に腰掛ける。
「んー。美味しい!」
少し大きめの串焼きに甘辛いタレがかかって、空腹を満たすには丁度いい。
そうそう、これこれ!前に食べたことがあって、もう一度食べてみたかったの。
「旦那様は食べたことあります?」
「あぁ、あるよ。随分前のことだけど、久しぶりに食べると美味しいね」
「良かったー!私も久しぶりに食べれて嬉しいです!」
ふふっと笑うと、旦那様も優しく笑い返してくれた。
ほのぼのとした穏やかな時間が流れる。
食べ終わって、次はどこ行こうかなぁ…と考えていると、目の前を三人の親子連れが通った。
まだ若い夫婦の真ん中で、五歳くらいの女の子がはしゃいでいて、ほんわかと和む。
嬉しいのかずっと笑顔で、お父さんに手を引かれながら、お母さんと楽しそうにお喋りしている。
着物の後ろの帯に赤い風車を差してあるのを見て、ふとその姿が子供の頃の自分と重なった。
ドキリ…として、思わず女の子を目で追いかける。
すると、帯から風車が零れて、地面に落ちてしまった。