第3章 ─ かくとだに ─
馬車の中で、私がどんなに旦那様とのお出掛けが楽しみか熱弁していたら、あっという間に目的地に着いてしまった。
早っ……まだ気持ちの半分も話してないのに……
「さぁ。おいで」
馬車は人の通りが多い手前で止めるらしい、さっと車から降りた旦那様が私に向かって両手を差し出し、ふわりと抱き下ろしてくれた。
胸をときめかせるよりも、重いんじゃないかと心配してしまうのは乙女の性だ。
御者さんに見送られて歩き出すと、旦那様が私の耳元に顔を近づける。
「迷子にならないようにね」
「そこまで子供じゃありません!……でも、はぐれるといけないので旦那様にくっ付いときます」
「それなら安心だ」
いつものように旦那様の腕に手を回す。
子供のようにポカポカしている体温の私と違って、旦那様は体温は少し低い。
だからこそ、確かな存在を感じて安心する。