第2章 ─ こいすてふ ─
「……バレてましたか」
「はい。分かり易すぎるほど」
そんな私と糸魚川さんのやり取りに、ヤチヨさんと女中の皆さんが吹き出した。
糸魚川さんも困ったように笑みを深める。
ああ。皆好きだなぁ……なんて、幸せなことを思う。
女中さん達を仕切っているヤチヨさんは、最初の印象通り明るくて朗らかで、今では母子みたいですね。なんて言われるほど仲良くなった。
若い女中さんや通いの庭師の方は、さすがに話しかけてはこないけど、こちらから話し掛ければ笑顔で応じてくれる。
糸魚川さんは毎日のように会っていて、心から信頼しているし、まるで優しくも厳しくもある祖父のような存在だ。
護衛の三上さんはあまり顔は合わせないけれど、会えばいつも『元気かい?』と聞いてくれて、懐から小さなお菓子をくれる良い人だった。