第2章 ─ こいすてふ ─
その中でヤチヨさんと糸魚川さんの次くらいに、よく話すようになったのは意外にも秘書の佐渡さんだ。
最初こそ、近寄り難くて少し怖かったけれど─
『ああ見えて彼は優しい男だよ。にまた変な輩が近づけば自分が粛清すると言っていたからね。顔に出ないだけで根はいい子なんだ』
そんなことを旦那様から教えてもらい、少しずつ会話を増やしていけば、確かに感情が表情に出ないだけで怖い人ではなかった。
前に私のことをどう思っているのか、聞いてみると……
『金魚ですかね。社長をみるとパタパタと近寄ってくるので』
と言われ、周りに笑われた。
毒舌なとこはあるけれど、そこも彼の持ち味だ。
そして肝心の旦那様は相変わらず、格好良くて、優しくて、世界一素敵なのである。
ものすっっっごく忙しい人なのに、疲れた素振りを見せずに私の話をニコニコと聞いてくれる。
夕食はお仕事が早く済んだ四日に一回くらいの頻度だけど、朝食よりも長い時間を過ごせるので、それが最近の一番の楽しみだ。