第2章 ─ こいすてふ ─
「あの!たくさん着物を買っていただいて……本当にありがとうございます」
「気にしないで、歳をとるとお金の使い道に困るんだよ。だからが居てくれて丁度よかった」
そう言ってくれるのは、時任さんの気遣いだと思けど、〝〟と自然に名前を呼んでくれたことは嬉しい。
名前呼び……そう言えば、私は時任さんのことをなんて呼んだらいいんだろ?
弥一さん…は馴れ馴れしいし、皆と同じく旦那様って呼んでみたいけど、それってどうなんだろ?……うーん。
考え込んでいる内に会話を終えた佐渡さんはお屋敷から下がっていって、ヤチヨさんが私の代わりに頑張ってお勉強をしていたことを伝えてくれた。
あぁもうヤチヨさん大好き!!
それを聞いた時任さんは、目もとの皺を深くして柔らかく微笑んだ。
甘い笑顔に胸がきゅんと弾む。
「偉かったね。疲れてないかい?」
「全く!と、言ったら嘘になりますが……でも、糸魚川さんもいい方ですしお勉強も好きなので頑張れそうです」
「それは良かった。いずれ晩餐会に連れていくからそれまでに完璧にしないとね。あぁ…だけど、あまり無理をしてはいけないよ」
「……はい!私、頑張りますね!」
勢いで時任さんの腕に手を回すと、すんなり受け入れてくれてそのまま歩き出す。