• テキストサイズ

*喋よ花よ*-大正色恋浪漫-

第2章 ─ こいすてふ ─




「こ、これは……」


目の前に並べらた浴衣や着物は大量で、他にも色とりどりの装飾品が揃っていて目を丸くする。


「旦那様からです。お嬢様の好みが解らないからとひと通り揃えたみたいですね……」


そういうヤチヨさんも顔が引き攣ってしまうほど、私一人にこの着物の量は多すぎる。

しかもどれも上質なもので出来ていて、総額を考えるだけでも身体が凍りついてしまう。


「こんなに……私、勿体なくて着れませんよ……」

「ま、まぁ。一生ものですし!旦那様もお嬢様が家に来てくれて嬉しいのですよ!……少しやりすぎですけど、とにかく着替えましょう!」


そう言って他の女中さんたちと相談しながら、今日の着物を選んでくれた。


(時任さんに、またお礼言わなきゃ……)


家で着ていた着物は全て借金の糧にしてしまったから、自分の着物はあの控えめな柿渋色の着物だけだった。

こんなにたくさんの新しい着物が着れるだなんて、まるで夢の中にいるみたいにフワフワする。

私、時任さんに大事にされてる…って思っていいのかな。

淡い黄色の生地に小さな菊模様が入った着物に手を通しながら、そんな自分に都合のいい事を期待してみた。



/ 132ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp